なぜ今、統合報告書が重要なのか?
不確実性で予測困難な時代(VUCA時代)において、企業価値はバランスシートに載っている財務的な数値だけでは測ることができなくなりました。なぜなら、企業の持続的な成長を支えるのは、人材、技術力、ブランド力といった財務諸表には表れない無形の資産だからです。統合報告書は、その無形資産を活かした価値創造の道筋を、ストーリーとして語るものです。短期的な利益だけでなく、中長期の成長ストーリーや非財務情報(知的資本)の在り様が、投資家や社会からより強く求められています。ICMG Groupが掲げる「知的資本経営」とも密接に関わるこのテーマについて、「統合報告書」に焦点を当てて解説します。
統合報告書の本質と知的資本の関係
1. 統合報告書とは何か?そのベースにある知的資本経営の思想と価値創造ストーリー
統合報告書は、財務情報と非財務情報を統合し、長期的な価値創造プロセスを包括的に説明する報告書です。単なる情報の羅列ではなく、企業の戦略、リスク、そして知的資本をどのように活用して価値を生み出しているかを、ストーリーとして描くことが求められます。
IRレポートが投資判断に直結する財務情報を伝える一方で、CSRレポートが社会や環境に対して企業がどう貢献しているかの情報を伝えるのに対し、統合報告書は、これらを統合し、「社内のどのような知的資本を活用し、どのようにステークホルダーに対するアウトカムを創造するか/しているのか」という価値創造ストーリーを、明確なファクトと共に伝えることで、納得と信頼を獲得するものです。
この報告書の根底には、ICMG Groupが提唱する知的資本経営の考え方があります。ICMG Groupの知的資本経営は、企業がパーパスを目的に、持続成長と企業価値向上を実現するための、知的資本を活かした企業変革を実践する経営モデルです。その知的資本とは、財務諸表に載らない非財務資本であり、人が生み出す価値を人的資本、社外との関係性が生む力を関係資本、組織が価値を生む力を組織資本、と定義しています。
ICMG Groupは、企業に宿る知的資本をベースに、以下の4Dサイクルで、企業の知的資本経営の実装に向けて、価値創造ストーリーを描き、実践し、発信していくことを伴走支援しています。

2. 日本における知的資本経営とグローバルスタンダードへの貢献
日本企業が停滞した2000年頃、「企業には大きな強みがあるにもかかわらず、その強みを自身で認識できていない」という課題意識から、経済産業省の知的財産政策室が中心となり、知的資本経営の研究が推進されました。2005年にICMG Groupが関与し経済産業省とともに策定した「知的資産経営の開示ガイドライン」は、経営トップ自らが知的資本と企業価値向上を社会に解くことの重要性を示しました。
そして、ICMG Groupは、この考え方を日本のみならず、世界に広めるべく、知的資本経営モデルをOECDに持ち込み、欧米の有識者を巻き込むことで、グローバルスタンダードを作ろうと決意します。その結果、2007年に設立されたのが、
WICI(World Intellectual Capital Initiative)であり、イギリスの「Accounting for Sustainability (A4S)」とも連携しながら、統合報告の枠組みが形成されました。
そして、この流れを受け、2013年に設立された"国際統合報告評議会(IIRC)"が、WICIと協力しながら統合報告書の枠組みを採用・公表したのです。現時点では、IIRCが提案した経営モデルが最も包括的であり、完成度が高く、広く世界に認められていると言われており、統合報告書の概念やフレームワークには、日本の知的資本経営研究が大きく貢献したと言えます。
3. 日本の統合報告書の現状と課題
近年、日本の統合報告書の質は向上し、発行企業数も1100社を超えるなど、意識の高まりが見られます。しかし、まだ課題も残っています。フレームワークに囚われすぎ、項目を網羅するだけの「形だけのレポート」も少なくありません。また、統合報告発行に熟練をした企業でも、それが経営に活かされているか、経営の真の姿やそこに宿る意志を写しているか、というと、そうではない企業もあるように感じます。
重要なのは、単なる情報の羅列ではなく、説得力のある、経営としての価値創造ストーリーを語ることです。投資家は、企業が持つ様々な資本がどのように活用され、そこからどのような価値が生まれるのかという全体のメカニズムを見ています。経営者には、自社の知的資本をどのように活かし、どのような価値を生み出すのかというストーリーを語る能力が、ますます求められています。
統合報告書が描く未来の企業像
統合報告書は、単なる報告義務を果たすための書類ではありません。それは、企業が自社の存在意義や社会的価値を再定義し、未来へ向けた成長の道筋をステークホルダーに力強く示し、推進していくための羅針盤です。知的資本を可視化し、それを価値創造のサイクルに組み込むことで、企業は真に持続可能な成長を実現できると、ICMG Groupは考えます。
統合報告書は、貴社の真の強みを明確に伝え、世界から選ばれる企業となるための戦略的なツールです。統合報告書を作成するにあたり、貴社の価値創造プロセスを知的資本経営の視点から見直すことにご関心をお持ちの方は、いつでもご相談ください。