資源やモノの生産が価値の中心であった「工業社会」は過去のものとなり、個々人の知恵や創造力、すなわち「ブレイン・パワー」が最大の資本となる「知識社会」へと完全に移行しました。さらに、現代は、テクノロジーの進化によって、あらゆるものを取り巻く環境が複雑さを増し、将来の予測が困難な状況にあることから、「VUCA時代」と呼ばれています。
この歴史的な転換期において、企業経営のあり方にも根本的なパラダイムチェンジ、「株主資本主義」から「ステークホルダー資本主義」への転換が求められています。
ICMG Groupは、「すべての価値は人を中心とした知的資本から生み出される」という哲学を創業以来経営の根幹に据え、「バランスシートに記載されない見えざる資産=知的資本(人的資本、組織資本、関係資本)」を基盤とした経営、「知的資本経営(ICM: Intellectual Capital Management)」を提唱し、実践してきました。
特に、持続的な企業価値創造の源泉である「人的資本」の捉え方こそが、日本企業が未来を拓くための鍵となります。

1. 人的資本は「コスト」ではなく「価値創造の起点」
従来の資本主義、特に短期的な財務指標を重視する「株主資本主義」では、人材は損益計算書上の「コスト」として計上されがちです。このような視点に捉われると、短期的な利益追求のため、長期的な成長可能性を摘み取るリストラなどの安易な施策に走りやすくなります。
我々が創業以来提唱する知的資本経営では、企業活動を「木の生態系」に喩えます。人的資本はその深層にある「根っこ」であり、すべての価値創造の連鎖の「起点」として明確に位置づけられます。
企業は人的資本、組織資本、そして顧客・取引先や地域社会といったあらゆるステークホルダーを含む関係資本を連鎖的に駆動させることで、財務/非財務の成果を生み出し、持続的に成長します。この連鎖を駆動させることこそが、現代における経営の要諦なのです。

2. 企業の持続的な成長を導く人的資本の3つの要素
ICMG Groupが知的資本として捉える「人的資本」は、単なる従業員の人数やスキルに留まりません。企業の持続的な成長には、大きく以下の3つの要素が必要だとしています。
人的資本としての経営者:
現代の経営者には、短期的な利益追求に終始するのではなく、会社が向かうべきパーパスと目指すビジョンを定め、戦略を構築し、それを社内外に真摯に伝える役割が求められます。
特に重要なのは、従業員やステークホルダーの求心力となる高いビジョンや価値観を形成する力、そして企業の知的資本を引き出し、組み立てる創造的な能力です。知的資本経営をリードするには、従業員を突き動かす強い意志「Willpower」が不可欠なのです。
人的資本としての従業員:
企業活動の主役は従業員一人ひとりです。従業員は、経営者が定めるビジョンを共有し、自らが持つスキルやノウハウを最大限に発揮し、業績達成に貢献する役割を担います。単に能力の高い人材を集めるだけでなく、ビジョンの共有を通じて組織全体で最大限のエンゲージメントが発揮されることが重要です。そして従業員自身にもまた、自律的な価値創造を生み出す強い意志「Willpower」が求められるのです。
人的資本としての組織文化:
組織文化とは、経営者が掲げるパーパスやビジョン、従業員が共有する価値観が日々の活動を積み重ねて自然と根付いた「組織の癖」です。
これは、現場の実践者が、共通の判断軸に基づき、環境の変化やリスクに迅速かつ自律的に対応していくための共通の土台となります。強い組織文化こそが、個人の持つ暗黙知を、組織全体の力へと転化させる上で決定的に重要な要素となるのです。
3. 「見えざる価値」の診断と変革の実行力:IC Rating®の役割
多くの日本企業では、慣習的な中計の策定、それに沿った通り一遍のマネジメント、失敗を避ける文化などにより、現場の自律性や創意工夫が抑制され、人的資本の持つ力を十分に発揮させることができていません。
貴社では、「人的資本への投資」が「企業価値(財務成果)」にどう結びつくか、その「ストーリー」を明確に説明できるでしょうか?
経営者自身が、自社に埋もれた知的資本、特に人的資本の真の強みや、「価値創造のストーリー」のどこがボトルネックになっているのかを客観的に把握することは容易ではありません。
<変革の起点となる知的資本の可視化:IC Rating®>
企業の見えざる価値を可視化するための手法が、ICMG Groupが継承・発展させてきた「IC Rating®」です。
IC Rating®は、知的資本経営の父とされるスウェーデン・ルンド大学のレイフ・エドヴィンソン教授が設立した会社が開発したツールを基に、ICMG Groupが日本企業向けに独占ライセンスを取得し、発展させてきたものです。IC Rating®は、世界中で数百件の活用実績を持つ、知的資本可視化の標準的なツールです。
IC Rating®は、単なる定量的なスコアリングに留まらず、プロフェッショナルによる弁証法的対話を通じて、ステークホルダーが本当に感じている価値や課題を浮き彫りにします。
知的資本の多くは、数値化が難しい「暗黙知」として組織内外に眠っています。暗黙知を「形式知」として引き出すためには、社内外の重要なステークホルダー(顧客、取引先、従業員、経営層など)との「対話」、特に本質を掘り下げる「インデプス・インタビュー」が不可欠なのです。

ICMG Groupは、このIC Rating®による知的資本の「見える化(Discover)」を起点に、戦略デザイン(Design)、実践(Deliver)、開示(Disclose)へと繋がる「4Dサイクル」を駆使し、人的資本を企業の持続的成長のエンジンへと転化させています。
4. 意志あるリーダーの覚醒と実装の伴走
知的資本の可視化は変革のスタートにすぎません。戦略を机上の空論に終わらせず、効果的に実行するためには、リーダー※の意思決定能力と実行力、すなわち強い意志(Willpower)の力が不可欠です。
ICMG Groupは、戦略を策定するだけでなく、その先の「実装」まで伴走することにコミットしています。実行力を高めるため、ICMG Groupは長年にわたり、リーダーの「軸」と「意志」を磨くための実践的トレーニングプログラムを提供しています。
※ICMG Groupにとってのリーダーとは、経営層に限りません。強い意志を持ち価値創造をリードするすべての人材がリーダーになりうるととらえています。
ICMG Groupの実践事例1:リーダー個人の軸探求(Leadership Journey)
リーダーの「軸」と「意志」を磨くための象徴的なプログラムが、「軸の探求 Leadership Journey to Find Your "Authentic" self」です。
人は教えられただけでは動きません。真のリーダーシップは、まずは自分自身をリードすることから始まります。

本プログラムでは、参加者を厳寒のモンゴルの、畏怖の念を覚えるほどの大自然に連れ出し、徹底的な自己内省のきっかけを提供します。
圧倒的な自然の前でこれまでの枠組みや思考を捉えなおし、自分が心の底から成し遂げたいこと、そして自分の「軸」となる価値観を言語化します。「私はできない」「失敗してはいけない」といった思い込みを打ち破る、行動への強いコミットメント、Willpowerを覚醒させます。
ICMG Groupの実践事例2:人的資本からの価値創造
ICMG Groupは、次世代リーダー育成のためのコーポレートユニバーシティの構築や、GLT (Global Leader Training) といった取り組み・プログラムを通じて、人的資本からの価値創造を支援しています。
GLTでは、多様な背景を持つ参加者が自らのプロブレムステートメントとWillpowerを武器に国内外のパートナーとの共創によって新規事業開発にチャレンジします。
コーポレートユニバーシティでは、「次世代リーダーの育成」を中核にトップダウン(パーパス/ビジョンの戦略への落とし込み)とボトムアップ(人的資本起点の組織強化、戦略策定)の連動を加速させることで人的資本経営を設計&実装し、CX の実現を試みます。
ICMG Groupが実践するHuman Capital Creationの活動について、統合レポートにて詳しくご紹介しております。
結論:未来を拓くための、実証的な方法論
人的資本をコストではなく「価値創造の源泉」として捉え直し、IC Rating®による可視化を経て、組織全体で価値創造のストーリーを実装する「知的資本経営」こそが、日本企業が再び世界的な競争優位性を確立し、豊かな未来を創造するための唯一無二の方法論であると確信しています。
経営者には、短期的な業績のプレッシャーに屈することなく、人的資本への戦略的な投資を継続し、知的資本経営を、腰を据えて実行していく強い意志(Willpower)が求められます。私たちはこれからも、意志あるリーダーと共に、企業変革と持続的な社会の実現に貢献してまいります。