企業経営において、目標達成は永遠のテーマです。しかし、数値による厳格な「管理(コントロール)」が、かえって現場の意欲を削ぎ、組織を硬直化させてはいないでしょうか。「売上が伸び悩んでいる」「次世代リーダーが育たない」「現場から新しい挑戦が生まれない」——。経営者が直面するこれらの葛藤は、まさに「管理の限界」を示唆しています。
ICMG Groupは25年以上にわたる「知的資本経営」の実践を通じ、ある確信に至りました。持続的な成長の源泉は、数値の管理ではなく、一人ひとりの意志(Willpower)を起点とした「価値創造の連鎖」にあるということです。この確信を戦略として可視化し、組織全体で共有するための思考フレームワークが、今回ご紹介する経営の羅針盤「Navigator(ナビゲーター)」です。

1. 未来への航路を描く羅針盤「Navigator」とは
Navigatorは、北欧Skandia社で開発され、ICMG Groupが日本企業向けに進化させた戦略構築ツールです。企業を「家」のような有機的な構造体として捉え、以下の5つの要素から価値創造メカニズムを設計します。

- 基礎(革新・開発): 未来への投資。「次世代への種まき」となるイノベーションの源泉。
- 核(人的資本): 価値創造の基盤。個人の「志(Willpower)」を組織のエネルギーへ変換する中心核。
- 壁(顧客資本): 信頼の蓄積。外部ステークホルダーとの間に築かれた、発展を支える関係性。
- 壁(組織資本): 知のインフラ。個人の知恵を組織の資産へ変え、再現性を持たせる仕組み。
- 屋根(財務的成果): 価値創造の結実。知的資本が循環し、ストーリーが実行された結果の指標。
これらを連動させることで、自社の真の強みが未来の価値へどう繋がるのか、その「航路」が明確になります。
2. BSC(バランスト・スコアカード)との決定的な違い
一見似ているBSCとは、設計思想が根本から異なります。最大の違いは「出発点」です。 BSCが最終的な財務成果から逆算して目標を割り振る「トップダウン/管理型」であるのに対し、Navigatorは個人の意志とビジョンの共有を出発点とする「ボトムアップ/共創型」です。過去の結果(KPI)管理ではなく、未来の価値を生む源泉(人・組織・関係)をいかに循環させるかにフォーカスします。Navigatorは数値を管理する道具ではなく、未来を共創するための仕組みなのです。

3. 「志」を組織の動力へ。エンパワーメントの本質
Navigatorの真価は、社員一人ひとりの「My Purpose」と組織戦略を接続することにあります。組織のビジョンが「与えられた計画」から、自分の志を実現するための「自分事」へと変わる時、現場に自律的な動力が生まれます。指示を待たずに知恵を出し合う「自己組織化」こそが、真のエンパワーメントです。
4. 「管理」から「学び」へ。戦略を進化させるOS
激動の時代において、期初の戦略はあくまで「仮説」です。Navigatorは、固定された計画書ではなく、日々の実践から戦略を柔軟に進化させる「学習・対話のツール」として機能します。未達を責める「問責」の場を、知恵を出し合う「学び(アクション・ラーニング)」の場へ。このサイクルが組織を「学習する組織」へと進化させます。
5. 実践の現場:Navigatorデザイン・ワークショップ
ICMG Groupでは、Navigatorの実装を支援する対話型ワークショップを提供しています。経営層と現場の「認識のギャップ」を埋め、若手からシニアまでが自らの役割を再定義する場です。財務数値の整合性だけではなく、全員が腹落ちし、実行を誓い合える「価値創造ストーリー」を創り上げること。それが未来への確かな一歩となります。

【結び】
これからの時代、人を惹きつけるのは実績の羅列ではなく、「なぜその価値が生まれるのか」というストーリーです。数値を追うだけの「管理」から、Navigatorによる「未来の実践」へ。一人ひとりのWillpowerが溢れ出す組織を、ここから共に描き始めましょう。